ほう。

孤宿の人 上

孤宿の人 上

孤宿の人 下

孤宿の人 下


孤宿の人」。

宮部みゆき 著。


上下巻の2冊、惹き込まれるように読んでしまいました。


やっぱり宮部さんの物語は良いのです。


ココのところ、重たい犯罪を解決する現代モノばかり
読んでいたせいもあって、かなり心は荒んでましたが、
これを最後まで読んで、心が洗われました。


もともと時代小説が大好きなぼくですが、
今回の作品はかなりお気に入りにです。


舞台は、港のあるとっても静かな小藩。
讃岐国、丸海藩。
ここに幕府の大罪人である
「船井 加賀守 守利」が流されてきたことから、
様々な事件が始まります。


巷では悪鬼の如く噂される加賀殿。
現に加賀殿が丸海藩に来る前後から様々な凶事が続く。


主人公は、加賀殿を幽閉するために準備された屋敷に
下女として働くこととなった「ほう」という女の子。


訳あって、下女として働くこととなった「ほう」と、
巷の凶事の根源とされる「加賀殿」との触れ合い。


真実と迷信。
善と悪。
そして、心の強さと弱さ。
なんか、色々なテーマがいっぺんになってるように思います。


加賀殿と ほう との会話は、
読み直すほどに奥が深いです。


あるいは、好意や善意に、根拠や拠り所は、必要なくて、
逆に、敵意や悪意には、
根拠や、拠り所、または捌け口が、必要なのかもしれない。
そんな事を考えました。


架空の国での架空の物語ですが、
ぼくらの知る、この日本の国の昔の姿を
とても上手に再現しているように思います。


形だけの秩序があって、
下々は等しく無知で不器用で、そして残酷で。
でも少し優しくて、温かくて、そして切ない。


最後で不覚にも、涙してしまいました。


もし、興味を持たれた方がいらしたら、
是非読んでみてください。
オススメです。


かも・かもでした。